「僕は、忘れないから。兄さんも、ジャックドーも」
形あるものが全て失くなるというのならば形などないものを死ぬ直前まで抱いていたい。
子供じみた、おふざけだと思われるかもしれないが、そうでなければ繋ぎ止めていられないのなら。
何度だってノートに書くつもりだ。
書ききれないほどの、思い出を。そうして、自分が犯した罪も全て思い返して、痛みを抱いたとしても、それでも、それは、二人が存在していた、事実になる。
「……強くなったな、ルック」
ルックの言葉に、少し驚いたようにルックを見て、そしてすぐにクロウは小さく笑った。
駐車場は目の前。
走るその足元に、目にも留まらぬ速さで通り過ぎた、銃弾。
思わず立ち止まった二人は、発砲音の響いた方へと目を向けた。
逆光でもわかる。あの立ち姿。
気が強く傲慢そうな影が、見えた。
「…母さん…」
「カイン、その手を離してこちらへ来なさい」
微かに、クロウの手を掴むルックの手に力が入る。
クロウの手には拳銃が、女の方へとその口をあけて狙いを定めている。その脳天へと。


