飛べないカラスたち



少し前に一度、一日に18人の人間をクロウとルックは削除したことがあった。


企業が破産して失業し、他の仕事が2年間見つからなかった人間たちで、利用価値なし、と決断されて削除することになったのである。


丁度、その18人は時間帯が皆、夜中から朝までが好都合で、家も近かったことから一気に仕留めることになったのだ。


削除作業は難なく終わったのだが、その日の夜からルックは消去音が耳にまとわり付いて離れなくなってしまった。


眠っていても悪夢を見てうなされる。眠らずに起きていても、いつの間にか転寝してすぐに叫び声をあげて暴れだす。


ルックを見て、クロウも眠れなくなったことがあった。


目を覚ましていても『音が聞こえる』とルックは耳を塞いだが、音は鳴り止まない。


『許しを乞う、腕と、憎しみに満ちた、腕が、伸びてくる気配がする』と目に見えて疲弊し、悪化していた頃、ルックはポツリと隣で何をするでもなく座っているクロウに言ったことがあった。



『僕を殺して、クロウ』



まだ学校に通っているべき年齢の少年が呟くには、酷く絶望的で真面目な声だった。


切羽詰っていれば落ち着かせて怒鳴りつければ、どうにかなったのかもしれなかったが、逆に静かに言われると、流石のクロウも言葉を失い、返答に困った。


勿論、頷くなどと言うことは到底する気はなかったが、そこまで思いつめられたルックの心をどう支えてやればいいのかわからなかったのである。



『僕の武器じゃ、力が要るから、きっと途中で萎えちゃうんだ。だから、クロウ…』



縋るような声に思わず顔を逸らした。