「でも、一人じゃ危ないよ!僕も残る!」
「銃器相手に、ナイフのルックが敵うと思いますか?」
言われて押し黙る。
相手は長距離型、というよりは全距離で使える武器だ。
短距離でないと戦えないナイフでは、近付いた時には殺されているだろう。投げれば長距離も可能だが一発しか使えない。
呼び寄せられたのであろう、銃に長けた大人たち相手に、高がナイフを一つ持っているルックが居たところで、足手まといにしかならない。
それは彼を絶対殺すな、という外交長官の命令があっても、だ。
レイヴンがルックを盾にして戦うことなど、出来るはずがない。勿論、クロウもだ。
「早く行って、こんな所で時間を無駄に使わないで下さい。…あぁ、でも開いたら、ちょっと助けに来てくれると、助かります」
真剣な言葉の最中、急に危機感のない声と笑顔でレイヴンは二人を見上げるとルックにジャックドーから手渡された短刀とレイヴン特製の小さなスーパーボールのようなものを渡し、手を振り、槍を構えた。
大人数の足音が近付いてくる。
時間はない。
「…絶対助けに来る。踏ん張れよ」
「……カインを、宜しくお願いします」
それは、『カラス』としての仲間ではなく、義弟の面倒を頼む兄の顔。
下唇を噛み締めながらクロウはそういうと、ルックの腕をまた引っ張って階段を駆け上がった。
「兄さん…っ!」
手を伸ばそうとしたルックを見上げて、レイヴンはいつものように、優しく笑った。
「気をつけて下さいね、カイン」
引きずるようにして、ルックはクロウに引っ張られて屋上へと向かった。
屋上へと続く階段を駆け上がる音を聞きながら、穏やかに微笑んでいたレイヴンは、目を閉じてその足音を追う。
幸い、上には大勢の足音はない。


