削除音というのは人間の心臓(コア)を破壊した時に響く高音の電子音で、人工呼吸器の止まった時の音をもっと歪に捻じ曲げたような、独特な音のことを言う。
その音はイヤホンをつけている人間にのみ聞こえるようになっていて、登録された地区の人間が死ねば地区の端から端にいたとしても聞こえる。
この音を聞けるのは国の上層部と『カラス』たちのみで、上層部の人間は時たま専用のイヤホンを耳につけて聞くことがあるが、殆どは聞いていない。聞かずとも『カラス』たちが仕損じることはないと思っているのである。
『カラス』たちはこのイヤホンが体内に内蔵されているので嫌でも聞こえる。いや、聞こえるというよりは響くといった方が正しいだろうか。
その音で、仲間がどれほど殺したのかを計算することも出来るし、仕事が終わったことも連絡を取らずともわかるようになっているのだ。
しかし、この音の歪さに悩む『カラス』は世界中にいる。
この音を聞くのが嫌で、自殺した『カラス』の一員も世界中でそう少なくは無い。
大人でも小気味よいものではないのだ。16歳の少年が一気に36人もの消去音を聞いて、耐えられるかもわからない。
ちなみに、医療機関での死は削除音が聞こえないように最初に薬で削除音を発生させる電子機器を壊すことになっているので、医療機関でどれだけ人が死んでいようが、『カラス』は知らないし聞こえないのである。
「やっと夜泣きが止んだと思ったら懲りもしないで無茶苦茶言いやがって」
「あはは、あれは凄かったですねぇ。クロウの方が死ぬんじゃないかと思いましたけどね、私」
「笑い事じゃねぇよバカが」


