飛べないカラスたち





「…母さん…?」



その声に反応するように伏せていた視線を上げた女は、気だるそうにひとまずの挨拶を伝えた。



「久しぶりね、カイン。そして……レイ。今はルックとレイヴンだけど」



レイヴンに関しては何も言えない。


女の方も特に何か返事を求めることもなく、何枚かの紙資料を片手に抱え、総理大臣の隣に立った。


どういうことだ、と各々の心に巡る疑問を言葉にせずともわかったのだろう、総理大臣が代表として説明を付け足す。



「彼女はこの国の外交長官を務めてくれている女性だ。そこにいるルックの生みの親で、レイヴンの義母となるのだろうかね。レイヴンの母親が彼女の旦那の愛人だったんだよ」



「外交長官…」



ルックが一人で留守番をしていた頃、母親は外交長官への道を歩き始めていたと言う。


そして、今では日本の顔となっているようだ。


そんな母親が何故今こんな形で登場するのか、総理大臣の今の発言を聞いていたのか、そんな疑問が幾つも脳内を駆けずり回る。


混乱する四人を他所に、女は資料をめくりながら話し始める。



「この度、わが国では水分を含めば数百倍に膨らむ砂の製作に成功しました。環境問題にも注意を払い、この国一番の災害、地震にも強い素材を。よって、国土を広げ、かつての日本の形を作ることはおろかそれ以上の国土を手に入れることが可能となりました。…つまり、人間を削除するに至らなくなったのです。『カラス』の役目は終わり、そして新しい国家を作るために闇歴史は忘れなければいけません。なので、あなた達にはこの場で、死んでもらうことになりました」