飛べないカラスたち




レイヴンは動くこともなく、それが青銅の門を抜けて、トラックにまるで荷物のように運び込まれる様子をぼうっと眺めていた。


ある程度の治療をして、運び込まれたにしてはおかしな光景である。


底の深く大きなあの箱に下半身を吹き飛ばされた少女が一人だけしかいなかったとは思えない。


現に脚があったのだから。


何人かを詰め込んでトラックに乗せるなんて、治療が必要なはずの彼らにする行為ではない。


どういうことなのだろうかと、考えていた時に、中からバキィ、という重たい音が響いた。


のろのろと立ち上がって中を覗き込んだレイヴンの目にはまるで屠殺場のような光景が広がった。


大主教が、長刀を、酷い怪我を負った、市民に向けて、突き立てて、いる。



「…安らかに」



市民を箱に詰め込む大主教の前に、次の順番待ちの男が泣きながら祭壇に寝転がる。


そして、その心臓に、長刀を、心臓に、深々と。



「大主教様!!」



レイヴンは叫んで駆け出そうとしたが、あまりのショックに脚はまだ正常に動かず、暫く走ってすぐにガクンとその場に崩れるように、倒れた。


吐き気が、酷い。


噎せ返るほどの血臭。死臭。



「レイさんか…君は休んでいなさい。若い君には心を病む一日だったでしょう」



「お止めください大主教様、命を奪うなど、聖職者の行なうことでは…!」



「君は優しい。だがね、レイさん…その優しさが、人々を苦しめることも時には覚えておく必要がありますよ」



そういって、大主教は男をまた箱に詰め込む。



「お優しいレイ様…これで私たちは救われるのですよ」



コアが半分見えている、肩から胸にかけてごっそりと失ってしまった女は、蒼白の笑みを浮かべて呟いた。



「こんな姿では、再起不能になるのです。助かっても私たちはもう仕事も何も出来ない、エネルギーを消費するだけの人間。すぐに殺される運命なのです」