飛べないカラスたち




勿論、医療機関へ行けば麻酔を打ち、その間に治療を施してもらえるが、治療不可能なほどの傷の場合、家族の判断で殺すか生かすかを選択させる。


生かしても、常に麻酔を打たなければ痛みに泣き叫び暴れまわることになるので、大抵は治療不可能=死という認識がされている。


なので、人を殺せなくなった一般人は治療不可能なほど相手を攻撃し、結果医療機関でコアを破壊させるという事件が何件も増え、話題になっているのが現状だ。


死なないようにコアを強くさせたのが、仇となった。


なので、皮膚の強い遺伝子を受精卵の段階で組み込むことも最近は予防接種のように行われている。


とはいえ、人間が作る人間殺傷用の兵器の前では無力である。


そして、怪我をして教会に逃げ込んできた人間と言う形を最低限留めた被害者を目の当たりにした、レイヴンも、また。



「た、たすけ…て、レイ様…!」



「大丈夫ですか!?早く教会の奥へ逃げてください!」



「痛い、痛いよぉ…!助けて…」



「もうすぐで救急車が来ますから、頑張ってください!」



教会のあの青銅の門から礼拝堂への道は赤く濡れて汚れていた。


血の匂いが、外だと言うのに充満して酷い吐き気を覚える。


内臓を手に持ちながら覚束無い足取りで歩く、少し前にこの第三地区に初めて来て不安だと話していた女。


両手を無くした、いつも迷惑をかけている妻に謝りたいのに照れくさくて謝れないと悩んでいた男。


下半身全てが消し飛んで、腕の力だけで歩く、母親になる決意をしたと言っていた少女。


眩暈がするほどに、知り合いの不幸というのは、レイヴンの心を苛んだ。