「まさに若者用、といったところで」
「既に二人は決まっているみたいですね」
「早く見つかって欲しいと願う気持ちと、そんな若者を増やしたくないという気持ちが混ざってますよ。ですがもう、老いぼれは必要なさそうですな」
庭を通り越して、寄宿舎へと向かう彼らの声は段々と遠退いてわからなくなったが、レイヴンは暫くその場から出ることは出来ず、自分の足元を見つめていた。
何のことだろう。
それが、全ての感想だった。
何もわからないまま、暗い礼拝堂で一人首を傾いで、暫くして体が冷えたのでレイヴンはこっそりと礼拝堂から出ると、鍵を締めてもと来た道を戻ろうとした。
その、足元に、違和感。
見れば、黒い塊が落ちていた。
ゴミだろうかとしゃがみ込んで手を伸ばすと、それはヌル、とベタついた液体で、月夜に翳すと微かな赤みを帯びており、血液であることに気付いた。
ふと視線を上げると大主教達が歩いていった道に点々と赤い液体がこぼれており、目印のようになっている。
怪我をしていたにしては、特に痛がる素振りもなく普段となんら変わりのない声色だったはず。
レイヴンは急いで部屋に戻って、大主教と司教の部屋へと訪れようかと迷って、諦めた。
そして次の日の朝、その血の汚れは何事もなかったかのように消え去っていたので、あの汚れは錯覚だったのではと考えるようになった。
勿論、手に付いた滑りを忘れるわけはないが、妙な雰囲気を纏った二人の会話に少し気圧されて、忘れようとしたのである。
しかし、思い出す日はそう遠くないうちに来た。
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