「大変でしたね…もう大丈夫ですよ、あなたを受け入れましょう」
その言葉を聞いたとき、レイヴンは肩に降り積もっていた不安や孤独が一気に落ち、思わず涙を流し、礼を述べた。
初めて神というものを信じ、その神は人々の中にある良心であることを、レイヴンは感じたのである。
その日からレイヴンは聖職者として生きることになり、教会の雑用をこなしながら、住むことになった。
礼拝堂の掃除や、教会の敷地内の掃除。ミサの準備に、教会で生活している皆の食事の用意など。
思った以上に教会に助けを求めに来ている人間は多く、レイヴンと同じく、家を無くした人々がそれぞれ聖職者となってここに勤めていた。
給料は勿論出ないが、衣食住に困ることはない。滞在費も必要ない。
「人が溢れることはないのですか?」
自分へと手を伸ばしてくれたその老人、後に大主教と知るその人物に、レイヴンは一度尋ねたことがあった。
自分のように家を失う人間は、残念なことに多い。
土地が以前より減ったこともあるし、人間の頭脳の容量が増して、仕事を貰えなくなった人たちなど、理由は様々だが。
大主教は柔らかく微笑みながら小さく頷いて、答えた。
「えぇ、ここは国にも認められた場所ですから…部屋は沢山ありますし、私たちが皆さんに新しい仕事先などの環境を提供するので、出て行く人もいるのですよ。とても寂しいことですが、嬉しそうに出て行く彼らを、どうして引き止められましょうか」
「そうなのですか…」


