飛べないカラスたち

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老婆にお礼の言葉を述べて、レイヴンはバスを乗り継いで教会へと辿りついた。


青銅の門が最初にレイヴンを迎え、その門の迫力に少し気圧されたレイヴンは恐る恐る、その門を開く。


門の中には綺麗に整備された庭や寄宿舎が窺えて、礼拝堂のドアを開くと、その中には沢山の人が祈りを込めて、十字架へ跪いている。


特に宗教について思いいれも何もなかったレイヴンはその光景を暫くまじまじと眺めていた。


正直、祈れば助かるなんてことは、レイヴンは微塵も信じてなどいなかったのである。


そんなレイヴンの背後から、影が伸び、少し年老いた声が掛けられた。



「どうかしましたか」



「あ、…すみません」



何故か謝った。


公共の場なので勝手に入り込んでも咎められないはずなのだが、レイヴンは自分というものに実は酷く自信がもてない人間だったのである。


そんなレイヴンを、聖職者であろう、法衣を着た年老いた老人はにこりと微笑んで見せた。



「なにか、お困りのようですが」



「えっと……私、家を追い出されてしまって……頼れる場所がないんです。ここに来たら、助けてくれるかもしれないと噂を聞いて…」



「詳しく聞かせていただいて構いませんか?」



そうしてレイヴンは礼拝堂の中へと進み、長椅子に座って彼へと自分の身に起こった事を全て、老人に洗いざらい話した。


自分が妾の子であることも、義母を騙していたことも全て。


もう父親を頼りたくないことも、それでも自分には一人で生きていける力もないことも。


老人は何か自分の意見を言うこともなくただ頷いて聞いてくれて、時折優しく詰まる言葉の先を促すだけだった。


全てを語り終えたのは教会に着てから一時間ほど過ぎた頃で、老人は近くにいた法衣を着た男に言って水を持ってこさせた。


渇いた咽喉に、その水は冷たく澄んでいて、吐き出された自分の思いを洗い流してくれるような、気がした。