【天使の片翼】


ホウト国の北。森海城と呼ばれる、美しい城の中で、

城以上に美しいとたたえられる、二人の女が、向かい合って椅子に腰掛けていた。


机の上には、小さな器が二つ置かれており、

その隣にある茶葉の入った容器からは、湯気が立ち上っている。


「まったく、お父様は、何をお考えなのでしょうか」


黒髪に、蒼い瞳をした少女が、ぽつりとこぼした。


それは、まるで、名演奏家が静かな曲を奏でるように、滑らかな音で、

その声を聞くと、みな、自然と心が安らぎを覚える類のものだ。


本当にね、と、少女にそっくりの声で、年上の女が同意した。


二人の女は、顔自体はそれほど似ていないが、

かもし出す雰囲気や、ちょっとした仕草が似ている。


親子だと言われなければ、仲のよい姉妹に見えるというのも、しごく納得のいく話だろう。


女は、熱い陶器を慎重に持ち上げ、空の器に、それを注いだ。

娘の前に、優雅な手つきでそれを置くと、いただきます、と言って、娘が軽く頭を下げた。