【天使の片翼】


「あ、あはっ。あはははは」


やけくそ気味に、笑って見せたが。


「何か、おもしろいことでも、ございますか?」


うっ、と喉が詰まった感じがして、ファラは、笑いを引っ込めた。


そっと、目だけを動かして、ソランを盗み見る。


自分を見つめる、茶色い瞳。

それは、小さい頃から少しも変わらぬ、真面目な幼馴染のもの。


ふと、ファラの目に、ソランの顎にある傷が、はっきりと映った。


ソランの顎には、今はもう、ほとんど目立たなくなった、小さな傷跡がある。

知っているものが見ないと、すぐには分からないほどの。


だから多分、彼女の見ている傷は、過去のものに違いない。


わかっている。

自分を、心から心配してくれていること。


「・・ごめんなさい」


ファラは、観念してつぶやいた。