【天使の片翼】


「ファラ様。だ、大丈夫でございますか?」


恐ろしいものでも見たような顔をして、

遠くから成り行きを見守っていたレリーが、ファラに寄ってきた。


「平気よ。いつものことだし」


いつものことなのですか?!と、レリーがいたいけな瞳を丸くしたのを見て、

ファラは、この国をほんの少しだけ、理解した気がした。


『女が、剣など振れるものか!』


ソードが発した言葉は、この国そのもの。


カナンでは、昔から、女が馬に乗ったり、剣を握ったりする習慣がある。

もちろん、一般の農民は、移動手段としてではなく、

農耕手段として馬を飼っているし、当然ながら通常剣を持つこともない。


なので、そういうことをたしなむ女性は、一部の富裕層に限られる。


父であるカルレインもまた、そういったことを歓迎したし、

彼女の姉も、剣は握らないが、乗馬は得意だ。


しかし、この国は、どうやらそうではないらしい。