【天使の片翼】


ソランの怒りを感じ取ったのかどうか、シドは、ファラに手を差し出した。


「私にも、大変よい勉強になりました。

また、お相手いただけますでしょうか、ファラ様」


もちろん、そこには、女の子がうっとりするような笑顔が、

ある。


「ええ。こちらこそ、どうもありがとうございました」


ファラは、ソランの横から体を出し、シドと握手を交わそうと腕を伸ばした。


世の中には、似ている顔の人がいるものだ。

よく考えれば、暗い中で会ったのだし、似てるといっても、それほどでもない。


ファラは、久々に体を動かした爽快感から、すっきりとした笑顔になって、

シドの手を握り締めた。


と。


ぐいと強く手をとられ、ファラは、体の均衡を崩す。

普段なら、抜群の平衡感覚で、体勢を立て直したのだろうが。

軽い疲労感も手伝って、ファラは、簡単にシドの胸におさまってしまった。


「おっと、大丈夫ですか?

だいぶ、お疲れのようですね。


私としたことが、年がいもなく、姫君との手合わせを楽しんでしまいました。

どうぞ、ゆっくり休憩なさってください」


自分から転んでしまったのかしら、と錯覚をおこしそうになるくらいの、自然な振る舞いに、

ファラは、はい、と頷いた。