【天使の片翼】


それを思い出したとたん、ファラの全身が、どくどくと脈打ち始めた。



・・や、やだ!思い出しちゃった!



自分の体が、別の人間のものになったような、奇妙な錯覚に襲われて、

ファラは、ぎゅっと目を閉じた。



・・ファラ?



ソランは、ファラの様子がおかしいのに、いち早く気づいた。

なにやらシドを見て、赤らんだような。


二人の顔を、交互に眺める。


目の前にいるやさ男は、あいかわらず、にこにこと、爽やかに笑っているし、

ファラのびっしりと長いまつげの下から覗く瞳は、かすかに潤んでいる。


二人の間に、何かあるのだろうか。

しかし、それは、今はどうでもいいことだ。


それよりも、大事なのは。


ソランは、シドをにらみつけた。


さっき、感じたのは、間違いなく、殺気、だ。

それは、明らかに、ファラに向けられたもの。