【天使の片翼】


そう思った瞬間、

ギギッ、という不快音とともに、ファラの視界が、広い背中にふさがれた。


何度となく見慣れた、背中。


「申し訳ございませんが、ファラ様も、だいぶ懲りたと思いますので、

この辺で、稽古を終わらせていただいても、よろしいでしょうか?」


鞘に収めたままの剣で、シドの剣を防いだまま、いつになくソランが低い声を出す。


その背中が、自分よりずいぶんと広いということに、

ファラは、たった今、気づいた。


ソランの顔は、見えないけれど。


「いや、本当に、驚きました。

姫君は、剣がお強いのですね」


見事な笑顔を浮かべ、女を口説き落とすがごとき穏やかな声で、シドは、剣を鞘におさめた。


ソード様も、そう思われるでしょう、と促され、

ソードは、大きく開いていた口を閉じて、真顔になった。


その顔に、笑顔は、ない。