【天使の片翼】


ファラは、女のように優しげな顔をしたシドの、想像以上に重い剣を受けて、

一瞬も、気を抜けないでいた。


シドの方はというと、まるで貴公子然として、優雅に微笑んでいるではないか。

その微笑みは、天使か、それとも悪魔か。



・・この人、やっぱりあの時の男よね?



しかし、だとしたら、肩に怪我をしていたはずだ。

それも、浅くないはずの怪我を。

しかし、どうみても、この軽快な足取りと剣の動きからは、とうてい怪我をしているとは想像できない。


やがて、時間の経過とともに、ファラの握力が、氷が解けるように、磨り減ってきた。

腕に、力が入らなくなってきている。


その隙を見て、シドがファラの懐に低く沈んだまま、大きく踏み込んだ。

ファラの剣に自分の剣を合わせると、そのままひねって、跳ね上げる。

とたんに、ファラの剣が、枯れ枝のように空中を散歩して、地面へと着地した。



・・やられる!



なぜか、ファラはとっさにそう思った。


ただの、稽古のはずなのに。