剣と剣が激しくうねり、衝撃音が、共鳴するかのように周囲の木々を揺らす。
・・この人、
強い!!
流れるような、剣の動き。まるで、剣が生きているようだ。
ファラは、なまった体が思ったように動いてくれず、必死の形相になった。
シドとファラの剣が、よくできた芝居のように、何度も交差し、
そのたびに、鈍い音をたてる。
是非にと言うファラの前に、いつもの事ながら結局は、ソランが折れる形となり、
ファラの剣の相手を、王子の守り役であるという、このシドという男に頼むことになったのだが。
シドの最初の第一歩で、ファラ以上にソランの顔色が変わった。
細い体から伸びる、長い手足。
身長は、ソランよりも頭一つ高いが、ひきしまった体は、むしろ華奢に見えるくらいだ。
一見やさ男に見える風貌とは相反し、その腕前は、並みの剣士ではあるまい。
気配を感じず近づいたときから、只者ではないと思っていたが、
まさか、これほどとは。
刃先をつぶしてある練習用の剣とはいえ、下手をしたら大変な怪我を負うことになる。
ソランは、眉間にしわを寄せて、二人の動きを注意深く眺めた。
いつでも飛び込めるように、体の重心を移動させながら。


