【天使の片翼】


もう少しで、その原因が確たるものとして網にかかりそうになった時、

ソードのかすれた声がして、それを取り逃がしてしまった。


「剣の稽古中なので、失礼します」


ファラに向けられたソードの小さな背に、言葉を投げかける。


「あら、私も剣は得意です」


「あなたが?」


一歩足を踏み出したところで、ソードが振り返った。


その目は、明らかに、ファラの言葉を信用していない目つきだったが、

見下したようなものとは違っている。


「私より、体の小さい方が相手なら、負けないと思いますが」


暗にソードを指して、ファラは、小馬鹿にした様に、ふふんと笑ってみせた。



・・だから、どうしておとなしくできないんだよ!



口を挟むつもりのなかったソランは、なるべく平静を装ってソードに頭を下げた。


「申し訳ございません。ソード様。

ファラ様は、ソード様にかまってほしくて、このような出来もせぬ大言壮語を吐いているのです。

どうぞ、お許しください」