【天使の片翼】


謁見の間は、外から見るよりも、さらに豪華なもので埋め尽くされていた。


見たこともない、色とりどりの布。

床には、なにやらふかふかする、布団のようなものが、一面に敷かれている。


ファラは、好奇心いっぱいの瞳で、ありとあらゆるものに触れようとして、

そのたびに、ソランが軽く咳払いをした。


もちろん、乾燥した気候のせいで、喉が痛むわけではない。

“カナン国の王女として、振舞うように”という、注意だ。


その目が、ファラの一挙手一投足を逃さぬというように、

正確に彼女の行動を追っている。

猫をかぶれ、と合図を送りながら。



・・ちゃんと、わかってるわよ。



同い年のソランに、子ども扱いされたような気がして、ファラはむっとしたが、

顔には出さなかった。