【天使の片翼】


「うわぁ、すごい!!おっきい~!」


天にも届きそうなホウト国の城を見て、ファラが放った第一声。


それは、彼女だけでなく、カナン国からほとんど出た事のない、

ソランや、他の兵士たちとて、言葉にしないまでも感じたことは、皆同じだった。


“カナンの城より、ずっと豪奢だ”


南北に長いホウト国は、西側を山に、南を砂漠に囲まれ、

北側にカナン国、東には、ノルバス国が位置している。


綿花の栽培が盛んで、それをもとに、さまざまな製品が作られ、

商業都市としても発展している。


製品を他国へ輸出する場合には、昔から、砂漠を避け、

カナンの領地を抜ける、隊商の道を通るのが常であった。


そのため、ホウトとカナンの両国は、昔から、緊密な関係を築いており、

王族による政略結婚も、少なくなかった。


もちろん、今回のファラの縁談の話も、

一見すると、このうえない良縁であるように思える。