男がいなくなって、ほっとしたのか。
ほんのわずかな間に起きた、消化しきれぬ内容を憂えてのことか。
それとも・・・。
ファラは、自分の唇に、そっと指を押し当てた。
少しだけ、指先を滑らせてみる。
男の唇の感触がよみがえって、ファラは、慌てて指をはずした。
生まれて初めての口付け。
一度目は、わけもわからず、強引に。
二度目は、礼だと言われて、やはり、雰囲気もなく。
ほおっ。
もうしない。
そう決めた心に追いつかないほど、多くのため息が、ファラの口から零れ落ちた。
・・さむっ。
ファラは、体の芯が冷えてきたのを感じて、自分の肩を抱き寄せた。
カナンと違い、砂漠の広がるこの国では、昼と夜の気温の差が激しいと聞いている。
体調を壊す前に、寝台に入ろうと考えて、ファラは部屋の中へ体を滑り込ませる。
振り返って見た月は、自分に起こった全ての事を知っているような気がして、
ファラは、急いで寝台に飛び込むと、頭から毛布をかぶった。


