男が去った直後、ファラは露台へと足を伸ばした。
道路を見下ろすと、人影が見える。
はっきりとしないが、ファラは、それが、あの男であると直感した。
こちらに向かって、何か合図をしたのが目に入り、ファラは慌てて顔を引っ込めた。
・・やだっ!
私ってば、何どきどきしてるの?
ファラは、高鳴る胸を押さえて、息を整える。
そのまま部屋へ戻ろうとしたが。
・・もう一度だけ。
そっと、まるで、泥棒にでもなった気分で、道路を覗き込む。
そこに、男の姿はない。
ほぉっ。
深いため息が漏れた。なんの、ため息なのか。


