【天使の片翼】


一瞬、男の胸を、針で刺されたような痛みが襲った。

それは、怪我からくる痛みではなく。

おそらくは、男のやさしさが感じさせる、罪悪感という名の、痛み。



・・ばかな話だ。

この俺に、そんな感情があるはずがない。



男は、自嘲するように、唇を緩めた。


美しい薔薇を咲かせるには、手入れが必要だ。

たくさんの日光と、水と、肥料が。

自分たちも含めた、大勢の人間が、彼女を花開かせるための、肥やしにされたのだ。



・・大輪の花は、つぼみのまま散りゆくのか、

それとも、咲いた瞬間、握りつぶされるのか。



つぼみをつけることもできぬまま、立ち枯れてしまった、愛らしい少女が、

記憶の中で、男に向かい、笑いかけた。