【天使の片翼】


窓から漏れ入る妙に赤い月の輝きが、二人の顔に濃い陰影を刻む。


ファラが、男の名前を尋ねるより先に、彼が口を開いた。


「手当てしてくれて、ありがとうな」


男は、初めて、嬉しそうな、無邪気な笑顔を見せた。


急に心臓が、狂ったように働き始めて、ファラの体中の熱が、一気に蓄積される。


「え、ええと、別に。

あの、ほら!怪我している人を助けるのは、当然でしょ!

だから、そのぅ・・・」


どうして、こんなに口ごもるんだろう。

いつもなら、どういたしまして、の一言で終わるはずなのに。


ファラは、怪我の常連である、幼馴染の顔を思い出した。

ソランの怪我の手当てをするのに、こんな風に、どきどきしたことがあったろうか。


男は、ふっと笑った。

何の裏もない、穏やかな笑顔。



・・・のように、見える。