【天使の片翼】


少女はきっと、今に花開くように美しくあでやかになるだろう。

少女とイリアの姿を重ね合わせ、

自分が少しでもそのための肥やしになったのだと思えば、男の心中は穏やかになるのだった。


「さて、行くか」


男は杖を上手に用い、片方しかない足で大地を踏みしめた。

桶いっぱいの水をこの体で運ぶのは、なかなかの重労働だ。

足があるべきその空間を眺めて、男は舌打ちしたが、すぐに思いなおした。



・・あの濁流で命が助かっただけでも奇跡だからな。



男は、助からなかった小さな命に思いをはせた。

せっかく助かった命を粗末にしたのでは、突如として生を奪われた幼馴染に申し訳ないだろう。



・・今度は、足の代わりになる新しい杖でもこしらえてみるか。



男は、ぎこちない動きで、一歩一歩慎重に歩みを進めた。

桶の水が、ときおり波だっては、地面を濡らしていく。