「名前を教えてくれるか?」
男は、ファラがそう答えるであろうと、確信を持って尋ねた。
カナン国のことで、知らないことなど、何一つ、ありはしないはずだ。
そう。第二王女の名前は・・・。
「ファラよ」
ファラの言葉に、男は笑い出しそうになるのを、腹に力を込めてやり過ごした。
「かわいい名前だな。さぞや、お父上が、かわいがってるんだろう」
それこそ、目の中に入れても、痛くないくらいに。
カナン国王が、妻や子供を天使と呼んで、溺愛しているのは、有名な話だ。
男の唇が、薄い笑みを刻む。
ファラは、少し恥らったそぶりを見せながら、ありがとう、と答えた。


