【天使の片翼】


「泣いてるのか?」


心配そうなソランの声で、ファラは自分が涙をこぼしていた事を知った。


「なんでもない。幸せすぎてこわいんだよ、きっと」


慌てて涙を拭う。

幸せなときにも涙が出ることは、カリナが産まれた時に体験済みだ。


ふうん、と不思議そうな顔をした直後、ソランはファラの顎に手をやり顔を上げさせた。


「じゃあさ、その幸せをわけてくれる?」


「わける?」


言いたいことが汲み取れなくて、ファラがそのまま繰り返すとソランはくすりと笑った。


「もう一度、口付けてもいい?」


ひいていた汗が、じんわりと肌に染み出すような気がする。

口にするのが恥ずかしくて、ファラは小さく頷いた。


長い廊下の床に、二つの黒い塊が一つに重なり合って影を落とした--。