【天使の片翼】


ファラの気持ちを知ってか知らずか、ソランは彼女の耳元でなおも囁く。


「ファラは、そのままでいいから。

いい子でなくても、お転婆でも。

もしも王女でなくなっても、変わる必要はない。

変わらなくていいように、いつでも僕が傍で守っていくから」


ソランの胸に顔をうずめ、ファラはその声にうっとりと耳を傾けた。

ソランのどくどくと打ち付ける心臓の音さえも、祝福の拍子を刻んでいるように思える。

包み込むように体に回された腕が心地よくて、ファラは瞳を閉じた。


自分は、なんて恵まれた人間なのだろう。

不意に、今までのさまざまなことが心に思い浮かんだ。


健康に生まれ、母が死んですぐに引き取られ、病気という病気にもかからず成長し、

愛する家族に囲まれて、なおかつ自分を支えてくれる男性に出会えた幸運。


何か一つの歯車が違っていただけでも、自分は幸せを掴むことはできなかったろう。

例えば母が死んだ後、自分を引き取る人間がいなかったら。いや、もしかしたらその前に死んでいたのかもしれない。


いつまでも二人でこんな風にいられたら。そうしていたいと切に願った。

ソランが守りたいと思うような女性であり続けるために、自分も努力していこう。

幸せをわけ与えてくれた全ての人々に、感謝を捧げて。