【天使の片翼】


ソランはファラの額にうっすらと汗が光るのに気づき、手ぬぐいを取り出した。

拭いてやろうとファラの体に近づくと、なぜかファラは早口にまくしたてた。


「や、やだ。何を言ってるのよ、ソランったら!

そりゃ、私はあなたのこと好きだし、二人の関係はうまくいってると思うけど、なんていうかその」


まるで一人芝居を見るように、ファラは一人でぶつぶつとつぶやいている。


「ファラ?」


くるりと背を向け、なおも何かを考え込んでいるファラを心配して、ソランはファラの肩に手をかけた。

とたんに、ファラがひっ!と短い悲鳴を上げる。


予想外の反応に、ソランの方が驚いて目を丸くした。

肩に置いたはずの手が、反射的に持ち上がって行き場を失くす。


ソランがどうしたものかと悩んでいるうちに、ファラが静かに振り返って窺うような目をした。


「その・・・ソラン。

これからも、よろしくね。あの、私ソランのこと、ちゃんと好きだから」


尻すぼみに小さくなる声だったが、ソランの耳にはしっかりと届いた。