【天使の片翼】


息の整わぬまま、レリーは、ちょうどソードと二人で馬に乗っているような格好で木にまたがった。

前にレリー。後ろにソード。


促されるまま彼の視線の先を追う。

と、整った田園風景のそのさらに向こう側に、素晴らしいカナンの森が一面に広がっている。


「まぁ!森が、森が見えるのですね」


ぜいぜいと息継ぎをしながらも、レリーの瞳がきらきらと輝く。


「あぁ。それに木陰が涼しくて、いい気持ちだろう。素晴らしい風が抜けていく」


ソードの言葉どおり、その場にいるだけで、心地よい風がレリーのほてった体から熱と湿気を拭い取ってくれた。


「はい!」


レリーはさっきまでの疲れが嘘のように吹き飛んでいくのを感じて、はっとしたようにソードを見つめる。


「もしかして。これを見せようとなさったのですか?」


「ふん。別に。お前があんまりうるさいから黙らせようと思っただけだ」


そっぽを向いたソードに、レリーはありがとうございます、と礼を述べてから、

不意に思い出したように言葉を足した。


「ソード様。日陰が平気になられたのですね」


「知ってたのか」


「なんとなくですが。いつも部屋の明かりを一晩中つけてらっしゃいましたし。

どんなに暑くても、日向を歩かれて。天幕もお好きではなかったから」