ごくり、とつばを飲み込んで、レリーは大きく深呼吸してから、腰の高さほどにあるうろに足をかけた。
足をかけたものの、どうして良いか分からない。
体重は、地面に残った片足にかかったままだ。
ソードは、枝に腹ばいになると、レリーの様子をみながら次々と指示を飛ばす。
「左手で傍の枝をつかんで、左足をその隣の盛り上がったところにひっかけろ。
右足で踏ん張ったら、もう一つ上の枝を右手で掴むんだ」
言われたまま力を込めるが、体がいう事をきかない。
木に登るには、思った以上に体のいろいろな場所の筋肉を使うということを、レリーは初めて知った。
「もう少し、そうだ。こっちに手を伸ばせ。下は見るなよ」
二人の指先が、わずかに触れ合う。
レリーは、苦しげに顔をゆがめ、肩がはずれそうなほどに腕を伸ばした。
「よし、いいぞ」
ソードはレリーの手を握りしめると、そのまま力任せに引き上げる。
レリーは歯を食いしばって反対側の腕で枝を引き寄せ、なんとか体を支える。
悪戦苦闘していると、やがてレリーの体がひょい、と空中に浮かび上がった。
「はあっ、はあっ」
息が上がり真っ赤な顔をして額にはびっしょりと汗をかき、髪の毛がすっかり乱れてしまったレリーを見て、
ソードは満足げに笑んだ。
「ほら、見てみろよ」


