【天使の片翼】


「お前、僕の昼寝の邪魔をするのか」


完全な言いがかりだとわかっていても、つい意地悪をしてしまう。

案の定、そんなわけでは、などとレリーの戸惑った声が届き、ソードは満足げな笑みを浮かべた。


「お願いです。降りてきてください」


再びレリーが泣きそうな声を上げたところで、ソードは両足を枝にまたがるようにおろして下を見下ろした。

両手は枝について、姿勢よく馬に乗っているような格好だ。


「お前がここまで僕を連れにきたら考えてやるよ」


猫のような瞳で、口の端を持ち上げるソード。


「そんな!無理です」


「いいから来い。命令だ。手をひっぱってやるから。そこのうろに足をかけるんだ」


ソードの視線の先には、確かに小さな穴がある。

そこに足を入れて手を伸ばせば、ソードの足に触れられそうではあるが。


レリーは目の前にあるごつごつした幹を、舐めるようにして見上げた。

枝と葉の間から、握りこぶしほどの大きさのソードの顔が見える。


木登りの経験のないレリーには、それがどれくらい大変なことかの想像もつかない。

絶対に無理だ、そう思ったとき、穏やかな声とともに長い腕が自分に向かって伸びてきた。


「大丈夫だ、ほら」