城門に程近い庭の奥では、レリーの予測どおり一人の少年が木の上に寝そべっていた。
といっても、体を水平に保っているだけの広さはないので、
太い枝に腰をおろして幹に背を預け、両腕を頭の後ろに組むという格好だ。
瞳は軽くとじられており、時折吹気抜けていく風が、金色の髪を浮き上がらせている。
「ソード様!」
心地よい声を耳にして、ソードは体勢を変えずに瞳だけを薄く開いた。
「レリーか。何だ」
「ユリレイン様がお待ちです。早く降りてきてください」
・・なんだ、もうそんな時間か。
ソードは楽しい時間を奪われたように感じて、おもしろくなかった。
カナンに来てからというもの、落ち着いて身をおける場所がない。
人々は皆親切で、ソードに対しても暖かく接してくれる。
それが嬉しくはあっても、そういうことに慣れていないソードは、どういう態度を取ればよいのかわからず、
いつでもなにやら尻のあたりがむず痒くなるような気分を味わっていた。
ユリレインだけは自分につっかかってきたものだから、思わず本性をさらけ出して殴り合いの喧嘩をしてしまい、
以来、なんとなく仲良くなって一緒に行動することが多くなったのだが。


