【天使の片翼】


とにかく、出血を止めるのが先決だ。

ファラは、傷の上に何枚も手ぬぐいを重ね、押し当てた。


「ちょっと、横になってくれる?

座ったまんまだと、力が入らないわ」


「お断りだ」


親切心からの言葉だったのに、即座に否定され、ファラは片眉を跳ね上げる。

素直についてきたと思ったのに、傷の手当てをさせないつもりだろうか。


「血が止まらなきゃ、死んじゃうのよ?」


「急所は、はずれている。俺が、あんなへぼ連中に殺されるものか」


ファラはむっとして、傷口に当てる布を、わざとぐりぐりと強めに押しつけた。

とたんに、男は、うっ、とうめいて、背を丸める。


ファラはすかさず男の肩に手をやり後ろに押し倒すと、

馬乗りになるような体勢で、男の腹に座った。


「人の親切は、素直にうけなさい」


「親切、ね」


男は、喉の奥をひっかけるように、くっと笑った。