「ひどい・・っ」
部屋の寝台に腰掛けさせ、男の衣類を脱がせると、
あらわになった男の上半身は、べっとりと血に染まっていた。
ちょうど、左胸のすぐ上、鎖骨の下辺りに、大きな傷跡がある。
暗がりでは、血の跡がまるでわからなかったが、灯りのもとにさらされると、
まるで、水溜りで遊んで泥はねした子供の衣のように血が染み込んでいる。
抜け出したのがばれたのではないかと、少々どきどきしながら宿に戻ったのだが、
皆、疲れきっているのだろう。
誰一人、目が覚めた様子はない。
ほっと胸をなでおろしたのもつかの間。
あまりにも大きな傷を見て、ファラは眩暈がしそうになった。
宿の人間を起こすわけにもいかず、ファラは自分がまだ袖を通したことのない藍色の衣を剣で引き裂いた。
ビリリィと、布の裂ける音が、派手に響く。
「少し、痛むかもしれないけど、我慢してね」
ファラは、男の前に跪くと上目遣いで男を見た。


