【天使の片翼】


「父様?」


男は、一瞬なにか考えるように、沈んだ瞳になり、その直後、はっとしたように顔を上げた。


じろじろと、ファラの顔を眺める。


「な、何よ!」


精一杯の虚勢を張って、ファラは、男をにらみつけた。


「そうか。お前・・・」


そう言って、男がファラの体にさらに近づいたとき、

もがいた彼女の拳が、男の左肩にめり込んだ。


言葉こそ発しなかったが、男は顔をゆがめ、苦しそうに息を吐く。



・・何?どうしたの?



自分を掴んでいた男の手が離れると、その手は、男の左肩を押さえつけた。


ファラは、一拍してから、自分の拳に違和感を感じた。


なにか、濡れたような、べとべとした感触。

暗くてよく見えないが、錆びた鉄のようなこの匂いは。