【天使の片翼】


下がっていい、という声で、ソランは一礼すると再び扉に向かって歩き始めた。


頭数の減った部屋の中では、依然楽しそうなカルレインが机に肘をついたまま、斜め後ろを振り返る。

その視線の先にいる人物は。


「マーズレン!お前の息子は、お前に似ずに、いい男になりそうだな。

俺相手にもひるまないとは、たいした度胸だ」


マーズレンは、顔をしかめた。


「私に似たのですよ」


「いや、あれは、ルシル似だ。物怖じしないあの態度は。

年中胃痛を抱えているお前とは大違いだ。」


「誰のせいで、私が胃痛持ちになったとお思いです?」


「あはは、まぁ、そういうな。これからもよろしく頼む」


二人のやり取りを聞いていたリリティスは、長いすから静かに立ち上がった。


「どうした?リリティス」


「今の話は、本当なのですか?

ファラをホウト国へやるつもりはなかったというのは」


わずかながら、苛立ちが含まれている語尾。