【天使の片翼】


それからカナンまでの旅は、とても快適だった。


カルレインは気を使ってか、それとも国での不在期間を少しでも短くするためか、

ひょっとしたら、妻の様子が気がかりだったのかもしれない。

先に早馬を飛ばしてカナンへと戻ったため、旅には同行せず、

代わりに山のような兵士が彼らの警備を担当した。


事情を知らない第三者が大勢いたこともよかったのだろう。

誰もが、自然の中で少しずつ笑顔を取り戻した。

それは、自ら明るく振舞うという、多少の演技が必要なことでもあったが。


心の奥にあいた穴が、そう簡単にふさがるわけがない。

だが、そうして笑って日々を過ごすことが、やがて本当に穏やかな日常を取り戻す力になる。


ファラは、その事を経験で知っていた。

そしておそらくは、ソードも。


時の経過というものは、ほとんどの心の傷に、有効であるのだから。


やがて、悪夢にうなされる時間が短くなってきた頃、ファラはようやく生まれ故郷に着いたのだった。


ソードの父が生まれた国。

そして、レリーの母が生まれた国へと。