【天使の片翼】


月がもたらす妖しい光が、男の光彩を、鈍く輝かせる。



・・きれい。



どうして、そんな事を思ってしまったのか。

ファラは、自分でもよくわからなかった。


ただ、その目が、自分の中にあるいっさいの感情--正邪を含めた全ての感情--を、かき消し、

そうして、ただ一つ、美しいと感じる心だけを、彼女の中に残したように思えた。


ふいに、男が、ファラに焦点を合わせる。

男の長いまつげがゆっくりと動き、こちらを観察するような瞳になった。



・・や、やだっ!



ファラは、我に返り、男から離れようと力を込めた。

よく考えたら、男性に抱きしめられるなんて、父や兄弟くらいのものだ。


生まれたときから、実の兄弟のように育ってきたソランだとて、

もう何年も、こんなに近くに寄り添ったことなどないというのに。