【天使の片翼】


カナンへ帰る馬車の中には、なぜだかソラン以外に、ソードとレリーも一緒だった。


「ちょ、ちょっと!どうして二人が一緒なの?」


何も知らないファラの馬車に乗り込む二人を見て、素っ頓狂な声を上げる。

そういえば、馬車の大きさがえらく大きいと思っていたのだが。


「ソード様は、カナン国へ遊学されることになったんです。

レリーは、その侍女として」


ソランは、涼しい顔で説明した後、ファラとソードの顔を交互に見て付け足した。


「これから仲良くするように、いいですね?」


「仲良くって言ったって・・・」


ファラがソードに会うのは、実は街へ帰ってきて以来初めてのことだった。

お互い、心身の衰弱が激しかったため、しばらくは寝台にくくりつけられていたのだ。

もちろん、別々の部屋で。


ファラは、目の前に座るソードの息づかいを感じながらも、直視できずにいた。

自分は、もちろん喧嘩をしたいわけではない。

だが、ソードはいまだ、自分を憎んでいるはずだ。

それどころか、シドが死んだのは、カルレインのせいだと、憎しみが倍増しになっているだろう。


ところが。