【天使の片翼】




・・何?

何が起こってるの?



ファラは、いっぱいに見開いた己の目に映る、男の鋭い瞳から、目が離せなかった。

男は、ファラの頭越しに、彼女の背後を見ている。


獲物を狙う、獣のような、鋭い目。


唇には、今まで知らなかった、熱く、甘美な、“何か”。


『ちっ!

こんなところで、いちゃつきやがって!』


『いいから、そんな連中ほうっておけ!

向こうを探すんだ!』


どこか、懐かしい声が、聞こえたような気もしたが--。


近づいたとき以上の速さで、重量感のある足音が、一気に遠ざかっていく。


だが、すでにファラの耳に、その音は届いていない。

もしくは、届いていたとしても、

それが、今しがた自分が警戒しようとしていた足音だとは、認識できていなかった。


意識は、別のことに集中していたから。