【天使の片翼】


切り立った岩のぎりぎり端に立って、ファラは下を覗き込んだ。


「シド!!」


シドは、小さな岩の突起に片手をかけ、空中に吊るされるような格好でこちらを睨みつけている。

シドの全身を伝って、雨の雫が滴り落ちる。

その真下には、すでに水かさを増した泥水が、川と呼べそうなほどの流れを生んでいる。


とりあえず、生きている事にほっとしたものの、状況が好転したわけではない。

このまま落下すれば・・・。

ファラは、身震いしてカルレインを見つめた。


「父様、お願い!シドを助けて」


カルレインは、ファラの隣で静かにシドを見下ろしている。


「どうする?シドとやら。

娘はお前を助けたいと言っているが、お前は助かりたいか?」


「父様!!」


思わず、非難めいた口調になって父を見上げた。

いつもなら、自分の頼みをすぐに聞いてくれるカルレインは、だが、動く気配を見せない。


ファラは、唇を噛み締めて恨めしそうにカルレインを見つめたが、すぐに自分の外套を脱ぎ始めた。