【天使の片翼】


「ジル」


レリーの囁くような声を、雨と剣の交わる音の狭間で、なぜだかファラははっきりと耳に捕らえた。



・・ジルですって?!



レリーが顔を覆った指の間から、カルレインたちとは少し違う方角を見ている。

そこには、雨を避けるようにして岩の間に身を隠した一羽の鳥の姿。


それは、ファラもよく知っている、カルレインの飼っている鷲だ。

もうかなりの年のはずだが、いまだ衰えぬ鋭い眼光を持つ偉大な獣。



・・どうして、レリーがジルの名前を知っているの?



何かがおかしい。

カルレインが助けに来てくれて、ファラは驚きと喜びと、少しの戸惑いを感じた。


この場所がわかったのは、ジルが知らせてくれたから、

素直にカルレインの言葉を信じたが、はたしてそれは本当なのだろうか。


おそらくそれは、真実の一部でしかなく、自分はその全体像にまるで気づかずにいるのだ。

ソードを縄で縛りながら、レリーにはまったくそういったそぶりをみせなかったカルレイン。

そして、それはソランも同じだった。