【天使の片翼】


黒い雲から隙間なく落ちてくる雨が視界を塞ぎ、前がよく見えない。

それでも、二人の剣が合わさる鋼の音だけは、後方にいる3人の耳にもいやによく届いた。


レリーは、真剣な斬りあいが恐ろしいのだろう。

硬く目を閉じて俯いたまま、震えている。

ソードは、唇を噛み締め、目を逸らさずに二人の戦いをじっと見つめていた。



・・こうなってほしくなかったのに。



ファラは、その姿を目に焼き付けようと、大きな瞳で前を見据える。

叩きつけるような雨の中、目を開けているのがやっとだ。

顔中が濡れて、いくつもの筋が、頬を伝う。

まるで、涙のように。


見つめる先は、未来の行方だ。


だが、この勝敗の先に、明るい未来は待っているのだろうか。

どちらが勝っても、心から喜ぶことなど到底できそうもない。



・・やはり、私が殺されていれば良かったんだわ。



自分と同じ年に産まれた、カルレインの本当の娘。

その娘の世話を任されていた自分の実の母は、流行り病で失った王族の命を自分の責任だと感じて後を追った。


残された自分を、何不自由なく育ててくれたカルレインのために、自分ができること。

ようやくそれが、見つかったと思ったのに。