【天使の片翼】


「なるほどな。傲慢さは、相変わらずというわけか」


巨大な雨粒は、見る間に乾燥した砂漠を泥の川へと変貌させる。

眼下に見える天幕は、必死でその流れに抗っているが、流されるのは時間の問題だろう。


シドは、腰にはいた剣を腕に取ると、ゆったりとした動作で、それを抜く。

そのまま鞘を崖下へと放り投げた。

枯れ枝のように、茶色い流れの中で浮き沈みを繰り返し、やがて鞘は見えなくなった。


「あんたには、積年の恨みがたっぷりあるからな。

今ここで、それを晴らさせてもらおう」


たんたんとした口調は、かえってシドの凄みを増しているように思える。

だが、カルレインは動じる風でもなく、唇に笑みを刻んだ。


「ファラの話では、ずいぶんと昔のことらしいな。

よくも女々しく、そんなにも長い間恨みを溜め込んでいたもんだ。

俺に殺された女も、浮かばれんだろうな」


「黙れぇ!!」


雨音に負けない、地を揺るがすほどのシドの咆哮。

と、同時に、カモシカのように軽やかな動きで、一気にカルレインとの距離を詰めると、

シドはその頭上へと剣を振りおろした。