【天使の片翼】


あと少しで天幕に届く、というところで、それは起きた。


シドの頬に、冷たい雫がぽたりと落ちる。

それを掌でなぞってから、シドは、天を見上げた。


「雨か!!」


天気を気にするように、レリーにもソードにも言い聞かせておいたが、

まだ、降り初めで誰も気づいてはいないのだろう。


シドは、らくだに乗ったまま天幕まで駆けると、大声を出した。


「皆、雨だ!早く山の上にあがれ!!」


雨がひどくなれば、この辺りは一気に川とかしてしまう。

何も持たず、一目散に高い場所に避難しなくてはならない。


だが、シドがいくら声をかけても、天幕からは返事が返ってこない。

それどころか、人の気配が感じられない。



・・まさか、寝入ってしまったのか?



寝るには少し早い時刻だが、外には姿がない以上、天幕の中にいるしかない。

シドはらくだを降りると、入り口の布を、勢いよく跳ね上げ中を覗き込んだ。