「ジル」
名前を呼ばれた鷲は、金色に光る目玉を主に向けると、全てを承知したかのように、
大きく一つ羽ばたいた。
「さて、行くか。ソラン」
「・・・」
「どうした?ファラを助けに行くのだろう?
俺一人では難しい。あのお転婆のために力を貸してくれ」
「は、はい!もちろんです!」
ですが、と喉まででかかった台詞を何とか飲み込んで、ソランはカルレインの背を追った。
・・命を懸けずに戦え、ってことか?
そんなこと!
どう考えても不可能だ、とソランは心の中で舌打ちをした。
相手は、敵意を持っているのだ。
それも、ファラを人質にとって。
そんな状況で、一体どうしろというのか。
ソランは、地平線に顔を出し始めた太陽を直視できず、目を細くした。
血のように、赤い光。
朱色の輝きを背に、ジルは天から与えられた両の翼を自在に操って
二人のはるか上空を泳ぎ始めた--。