間もなく、夜が明けようというころ。
クゥルルル。
外見に似合わぬ可愛い声で、その鷲は主に狩りの獲物をねだった。
ホウトの城から少し離れた、街と砂漠の境界線のようなその場所で。
「よしよし、いい子だ。
頑張ったな」
鷲が獲物を飲み込む様を、男は静かに眺めた。
獣は、自分が必要とする獲物だけを狩って、腹を満たす。
一見無慈悲な、弱肉強食に思える自然の姿。
だが。
男は、己の過去に向き直って、息を吐いた。
食べる以上を奪い、必要以上に壊し、多くの血を流した過去。
それが意味のない行為だなどとは、小指の爪の先ほどにも感じてはいなかった。
--妻に出会うまでは。
「カルレイン様。
僕、いえ、私もお連れ下さい」
傍に控えて黙っていた少年が、決意したように一歩前へ進み出た。
「ファラが心配か?ソラン」
「今回の件は、私の失態です。命に代えてもファラ様を助け出します」


