【天使の片翼】


シドの切れ長の瞳が大きく見開かれたが、それに気づくものはなかった。


「お前、何を言っている?」


探るような声で、シドはファラを注意深く見つめた。

わずかな光では、表情を読むことは難しい。


ファラに危害を加えた自分を、カルレインが殺しに来ると、そう言いたいのだろうか。

それにしては、脅迫めいた雰囲気ではない。

まさか、と思ったが、ファラはそれを言い当てた。


「シドは、復讐がすんだら、イリアさんのところへ行く気なのでしょう?」


今度こそ、シドは、一言も発することができなくなった。


「私、復讐されるから。おとなしくここで殺される。

だからシドは死なないで、生き延びて。

イリアさんのために、幸せにならなきゃ絶対だめだよ。」


その気持ちが何なのか、ファラにはよくわからなかった。

恋ではないだろうし、愛などではまったくない。


けれど、陳腐な感傷というには、もっと大きな、言い表せぬ深い感情が、

体のどこかからあふれ出して、操作できない。


そう。命を懸けてもいいと思うほどの。